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なぜ私たちは「話せば話すほど」すれ違うのか? 心とからだを開く、対話の知性

8月24日
読了時間: 4分
なぜ私たちは「話せば話すほど」すれ違うのか? 心とからだを開く、対話の知性

日々の仕事や暮らしの中で、「ちゃんと話し合っているはずなのに、なぜか心が通い合わない」「議論の末に、お互いが余計に頑固になってしまった」という経験はありませんか。


現代の私たちは、メールやSNS、オンライン会議などを通じて、かつてないほど大量の言葉を交わしています。


しかし、その多くは単なる「情報のキャッチボール」にとどまり、お互いの心が深く結びつく「真の対話」には至っていないのかもしれません。


昨日、小さな群馬にある保育園でご依頼いただいた研修会の準備をしている際に、「対話」について、改めて考えていました。


その時に時代も分野も異なる3人の先達の知恵を補助線にしながら、私が本当に求めている「対話」の正体について考えてみたのです。


「頭の対話」から「からだの対話」へ


演出家であり、人間のコミュニケーションを追究した竹内敏晴は、著書『思想する「からだ」』の中で、私たちは頭(意識)だけで考え、言葉を単なる「記号」として扱いすぎていると警鐘を鳴らしました。


竹内に言わせれば、本当の対話とは「からだ全体で相手を聴くこと」です。


私たちは緊張したり、相手を警戒したりすると、無意識にからだを硬くし、心の鎧をまとってしまいます。


その状態のままいくら言葉を尽くしても、それは自分の正しさを主張する「独り言の衝突」にしかなりません。


まずはからだの力を抜き、相手の声のトーンや佇まいをまるごと受け止める。


相手の言葉によって、自分の内側が少し揺さぶられる。その「震え」から自然と溢れ出てくる言葉こそが、相手のからだにじかに届く本当の声なのです。


「説得」ではなく「お互いが変わる」こと


では、からだを開いて行う対話のゴールとは何でしょうか。


社会学者の暉峻淑子(てるおか いつこ)は、対話とは「相手を論破して説得すること」でもなければ、「波風を立てないように妥協すること」でもないと言います。


暉峻の考える対話とは、


対等な関係性の中で、お互いの違いを認め合いながら「第三の新しい視点を共に生み出すこと」です。


これは竹内のいう「自己の変容」とも深く重なります。


真の対話が終わったとき、私たちは「対話を始める前の自分」とは少し違う自分に変わっています。


「私は絶対に変わらない」という頑なな態度のままでは、対話は生まれません。


「あなたと話すことで、私は変わるかもしれない」という、しなやかな覚悟こそが対話の本質なのです。


すべての土台にある「おびえない環境」


こうした「からだを開くこと」や「自分が変わることを受け入れること」は、人間にとって少なからず怖さを伴うものです。


バッシングされたり、馬鹿にされたりするかもしれないという恐怖があれば、人は絶対に心を開きません。 


ここで、現代の組織論で最も重要視されるキーワード、ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が提唱した「心理的安全性(サイコロジカル・セーフティ)」がつながってきます。


心理的安全性とは、簡単に言えば「お互いがおびえていない状態」のことです。


「ここでは、失敗を笑われない」「人と違う意見を言っても、拒絶されない」という確信があるからこそ、人は初めてからだをゆるめ(竹内)、対等に意見を出し合う(暉峻)ことができるのです。


個人から組織、そして世界へ


この「おびえからの解放」という思想は、身近な2人の関係から、会社組織、さらには国家間の関係にまで、まったく同じように当てはまります。


組織においては:


上司や周囲の目を恐れず、誰もが「脆さ(弱みや失敗)」を素直に開示できるからこそ、イノベーションが生まれます。


社会においては:


異なる価値観を持つ他者を「敵」として排除せず、その背景に耳を傾けることで、本当の民主主義が育ちます。


国家間においては:


自国の利益だけを守るために軍備(からだの鎧)を固めるのをやめ、人類共通の課題に対して「共に変わる覚悟」を持ってテーブルにつくことで、真の平和が見えてきます。


おわりに:小さな「ゆるみ」から始めよう


世界を動かすような大きな対話も、すべては「いま、目の前にいる人」との関わりから始まります。


次に誰かと大切な話をするときは、ロジックを組み立てる前に、まず自分の肩の力を一つ抜いてみませんか。


あなたのその小さな「からだのゆるみ」が、相手の緊張をほぐし、そこにしかない「真の対話」を呼び込む呼び水になるはずです。


 
 
 

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